日本の高齢化とともに、孤独死が増えています。独居死、孤立死などとも言われる家族に看取られない死が増えることで、特殊清掃業務依頼が増加しています。
高齢化社会になる前からも、事件事故の現場やゴミ屋敷など、特殊清掃業者が活躍する現場は多くあり、社会にとっても必要不可欠な業務となっています。
この記事は、特殊清掃が必要となったご家族に向けて、業者の選びかたを中心にまとめています。文頭では孤独死を例に上げました。孤独死の場合、お亡くなりになったことを確認するのが遅くなった場合、原状回復に特殊な技術が必要となります。孤独死に限らず、事故や事件、火災やボヤ、水害などでも同様に、特殊清掃が必要となっています。以下に詳しく見ていきましょう。
こんな時特殊清掃が必要です
親戚やご家族が孤独死だった時
人は死後内蔵から腐敗が始まり、やがて体液が遺体から出て寝具や床に溜まります。その臭いも部屋に充満します。できるだけ早い時期に対処することが必要です。
部屋で事件や事故が発生した時
マンションやアパートの大家さんから依頼が多いのですが、賃貸物件で事件や事故が発生した場合も、原状回復が必要となります。警察による立ち入り調査終了後にすぐ現状回復を開始することで、賃貸事業に影響が及ばないようにします。
家に害虫が発生した時
シロアリを始めとして、害虫は家屋の敵です。木造家屋の場合とくに害虫が発生しやすく、同じ害虫が何度も発生する場合など、特殊清掃による害虫駆除の検討が必要です。
遺品の整理をしたい時
ご葬儀の後の大きな仕事のひとつが遺品整理ですね。最近では終活の広がりとともに、生前から整理をする方増えていますが、それでもまだまだお亡くなりになったあとの大きな業務です。ご自身で所有されている家の場合、時間をかけてご遺族が遺品整理することも可能ですが、賃貸物件などの場合、退去期限までに整理ができない場合があります。そのような時は、清掃を兼ねて遺品の整理を行います。
ゴミ屋敷になった時
最近話題となるゴミ屋敷ですが、「床にゴミを置くようになったらゴミ屋敷の始まり」と言われています。あなたの家は、足の踏み場がありますか?ゴミが散乱していると転倒の原因となりますし、ホコリが溜まりやすくなり、健康被害の原因となります。ご自身でゴミを処分できなくなっている方も多いですので、特殊清掃業者がお部屋の清掃を兼ねて処分いたします。
自分でやらずに業者に清掃を依頼する理由
特殊清掃業者に依頼する理由は2つです。ひとつは「特別な薬剤など技術と経験が必要だから」もうひとつは「効率よく短時間で終わらせることができるから」です。
特別な技術と経験が必要
特殊清掃業者は、専門の薬剤や除菌や脱臭のための薬品などを使用します。臭いや液体の色などは、いったん取れたと思っても、時間が立つとまたもとに戻ることが多くあります。とくに、事件や事故、ゴミ屋敷などではその傾向が強く、ご自身では清掃できない理由の一つとなっています。
効率よく短時間で終わらせることができる
狭い部屋だと思っていても、そこに置いてあるものは予想外に多いものです。また慣れない作業内容のため個人で清掃を行うことは難しいのが実情です。
特殊清掃業者の選び方
p特殊清掃業者に業務を依頼することの大切さについては、おわかりいただけたことと思います。では、数ある特殊清掃業者から、どのような業者を選べばよいのでしょうか。その選びかたの基準をご紹介しましょう。
依頼者の気持ちになって作業ができるか
もっとも大切なことは「依頼者の気持ちになれるか」という点です。さまざまな特殊清掃の作業現場を依頼する方は、そこにいた人々と全くの無関係ではありません。面識があったり、交流があったりしてきた人たちが亡くなった後の現場を依頼してくるのです。またゴミ屋敷などでも、依頼者には捨てられない理由があり、ご自身では解決できずに依頼をしています。特殊清掃業者は、原状回復に務めることはもちろん、依頼者の気持ちに立った業務が求められています。
経験豊富な業者か
特殊清掃業務は、その名前の通り「特殊」な仕事です。後述する資格の取得はもちろん、さまざまな清掃の現場を経験したスタッフにこそ、安心して清掃を任せることができます。
清掃を依頼する際には見積もりを取ることとなりますが、見積もりの段階から「業務に精通しているか」「段取りはいいか」などについてチェックするようにしましょう。
明確な料金プランがあるか
特殊清掃の業務は、技術や薬剤などが必要になってくることから、極端な安価では請け負うことができません。見積もりの段階で「安いな」と思ったら、落ち着いて業務の内容を確認しましょう。業務内容と料金プランを見比べて、疑問点があれば納得がいくまで確認するようにしましょう。
アフターフォローは充実しているか
厳密に言えば、特殊清掃の業務は「清掃のみ」です。臭いや液体がきれいに取れきれたとしても、リフォームをする、解体をするなど、清掃後の業務も多くあります。特殊清掃後のアフターフォローが充実している業者さんのほうが、効率よく作業が進みます。
相見積も大切です
このように「安ければ良い」わけではありませんが、相見積も大切です。さまざまな業者と接することで、スタッフの接客や知識レベルが分かってきますし、なによりも「依頼者の気持ち」に寄り添っているかどうかがわかります。値段だけではない業者の質を見抜いていきましょう。
特集清掃業者が持つべき資格
このような特殊清掃業務を責任を持って行なうために、さまざまな資格があります。特殊清掃業者に依頼する際には、下記のような資格保持者かどうか確認してみるのも良いでしょう。取得していなければ業務ができないわけではありませんが、資格の有無によって、スタッフの知識を確認することができます。
特殊清掃優良事業所
一般社団法人「事件現場特殊清掃センター」では、全国の事業者から厳選した優良企業を推薦しています。この推薦がある事業者から選ぶことが大切です。万一この優良企業の作業でトラブルが合った場合でも、「事件現場特殊清掃センター」が対応してくれるので安心です。
脱臭マイスター
日本除菌脱臭サービス協会が主催する、新しい脱臭技術の技術と品質を保証する資格です。新しい技術を取得することで、従来あきらめていた脱臭が可能となっています。
この資格では、脱臭技術はもちろん、臭い物質の知識や臭気評価方法、脱臭技術事例、そして除菌の基礎等、脱臭の専門家として必要な知識と技術を総合的に学ぶことができます。
遺品整理士
一般社団法人遺品整理士認定協会が認定する、専門的な知識と技術で親族などに代わり遺品整理業務を行なうスタッフです。
孤独死・孤立死した故人の遺族に代わって遺品を整理する業者が年々増えています。なかには依頼者との間にトラブルとなるケースもあり、この資格が立ち上がりました。
事件現場特殊清掃士
死後遺体が放置され、体液や血液で汚れてしまい死臭が残った現場を原状復帰させる清掃を行う専門家です。
事故現場、という名前にとらわれず、ゴミ屋敷の脱臭などの原状復帰でも活躍する資格です。遺体を動かしたあとの部屋に残る臭いやシミなどで、ご遺族の気持ちが少しでも和らぐのならという気持ちで資格が立ち上がりました。
医療環境管理士
特定非営利活動法人日本医療環境福祉検定協会(NO JAAN MEDICAL ENVIRONMENT CARE ASSOCIATION:JMEC)が管轄する民間資格です。
特殊清掃現場は非衛生的な環境が多く、感染対策のスペシャリストとして現場の感染防止対策を指揮することができます。
防除作業監督者
厚生労働省が認定する国家資格です。特定の資格の免許、免状等を有する者だけが行うことができ、資格がなければその業務を行うことが禁止されている業務独占資格でもあります。
建築物のねずみや害虫などの防除作業を行なう知識と技術があります。
こんな特殊清掃業者はNG
極端に料金が安い
特殊清掃の料金が極端に安い場合、業務内容が不足している場合があります。必要に応じてオプションとして別途料金が必要になることも多くなります。
見積もり前に現場確認をしない
特殊清掃では、現場を確認せずに見積もりが出ることはありません。汚れは臭いの程度、部屋の広さなど、現場の条件によって作業内容は変わってきます。いざ作業に入ってから、必要な業務が増えていき、料金がつり上がってしまうことがよくあります。現場を確認せずに見積もりを出す業者は危険です。
特殊清掃の作業順序
ここでは、一般的な特殊清掃の作業手順を、株式会社ティプロを例にとって見てみましょう。
①現場確認後お見積り
警察の現場検証終了後、ティプロの「事故現場特殊清掃士」の資格を持ったスタッフが訪問し、お見積りを作成します。
その際、清掃後のリフォームなどがあれば、ティプロが一括して業務を請け負います。
②ウィルス対策で徹底除菌
新型コロナウィルスでもわかるように、血液一滴からも感染がはじまります。ティプロでは、国が災害時等に使用する複合二酸化塩素を使用して除菌をします。
③遺品の梱包と搬出
故人様が大切にお持ちになっていた遺品の数々を、故人様の気持ちになって梱包し搬出します。
④汚染部分の解体と徹底除臭
汚染部分をしっかりと確認することで、解体すべき最低限の部分だけを解体し、徹底的な脱臭を行います。
⑤腐敗臭を徹底的に除去
強力なオゾン脱臭機を使用して、腐敗臭を徹底除去します。
⑥臭い戻りがしないリフォーム
建築業務にも詳しいティプロでは、解体後の修復も業務の範囲です。汚染部分を取り除き、リフォームを行います。
特殊清掃の料金
ティプロの料金体系の場合、特殊清掃だけでなく、「遺品の仕分け」「消臭・消毒」「ハウスクリーニング」「相続相談」「リサイクル品査定書作成」「合同供養」の料金が含まれています。
特殊清掃も、床部の特殊清掃、血液・体液の除去など、業務内容がしっかり書かれた明朗会計となっています。この料金表をもとに、特殊清掃の専門家が現場に立ち会い、お見積りを作成しています。
まとめ
特殊清掃業者の選び方についてまとめてみました。特殊清掃を依頼する状況というのは、時間的にも、依頼者の気持ちの上でも余裕がなく、不誠実な業者に依頼してしまうことも少なくありません。
ぜひ見積もりの段階から、相見積や保有資格などで業者の質を確認し、円滑な特殊清掃業務を進めていただきたいと考えています。
現代は、超高齢化時代と言われています。一人住まいの方が増え、もしもの時は残された身の回りの生活用品の整理にご遺族は途方にくれることになります。遺品整理士として、専門的な知識と豊富な経験から、遺品の整理や生前整理などのお手伝いをさせていただきます。