賃貸物件のオーナーにおいて、退去時には様々な問題が発生しがちです。
特に、大きな問題となるケースとして、入居者が残置物を置いていってしまったときがあります。
残置物を処分したくても、勝手に処分できないケースが大半であり、オーナーとしても頭が痛い問題となります。
では、残置物はどのようにして処分すればよいのでしょうか?
この記事では、残置物の正しい処分方法や費用相場を解説します。
目次
残置物とは
残置物とは、あまり聞きなれない言葉となりますが、読み方はざんちぶつとなります。
残置物とは、前の入居者が貸主から了承を得ないまま残していったものを指します。
一般的には、発生したごみなどは片付けて退去するケースが多いのですが、部屋に備え付けてあるエアコンや冷蔵庫、照明、ガスコンロなどはそのまま退去するケースが多いです。
このようなものが、結果として残置物となり、処分が必要になる場合があります。
残置物と混合されがちなものとして、設備があります。
設備とは、マンションやアパートに付帯しているものを指し、貸主が利用できるように契約者へ提供しているものです。
両者の明確な違いとしては、賃主が設置したものが設備、入居者が設置したものが残置物という扱いになるのです。
残置物とごみの違い
残置物はごみの一種と考えるケースが多くあります。
ただし、実際には両者は全く異なるものとして取り扱わなければなりません。
その理由は、残置物は前の入居者に所有権がある点です。
よって、ごみのように勝手に処分することができず、処分するのに苦労するケースが多いのです。
残置物かごみかの判断はとても難しいですが、基本的には残していったものは残置物として扱うのが無難です。
残置物が発生する理由
残置物が発生する理由は、いくつか存在します。
代表的な例として、夜逃げの形で退去した場合です。
夜逃げすると、基本的に生活していたそのままの状況で、必要最小限なものだけを持ち出して退去するのが一般的です。
よって、家具や家電などは基本そのままとなり、それが残置物という扱いとなるのです。
残置物が発生する理由としては、他にも体力や経済的な理由で処分できない場合があります。
例えば、エアコンを撤去しようとしたときに基本的に業者に依頼しなければなりません。
そこで、処分費用を捻出できなければそのまま残しておかざるを得なくなります。
また、家具などは本当は処分したいものの、高齢で体力的に持ち運びができないなどの理由で残置物になるケースがあります。
他にも、残置物が発生する場合として退去者の好意でそのまま残しておくケースです。
エアコンなどは、次の入居者がそのまま使うであろうと判断して、撤去しないでそのまま残置物となってしまう場合があります。
ただし、必ずしも賃主や次の入居者にとっては好ましくない残置物である可能性もあり、好意が仇となるケースもあります。
残置物は許可なく処分できない
残置物の場合、賃貸借契約が終了している場合であっても、所有者は退去した入居者にあります。
よって、勝手に処分してしまうと、所有権の侵害という扱いとなり、また窃盗や器物損傷罪で損害賠償に繋がるリスクがあります。
よって、所有者である退去者に対して、許可を得たうえで処分する必要があるのです。
口約束でも同意を得ることは可能ですが、口約束だけでなく書面に残すことが重要です。
また、処分の費用はどちらが負担するのかをしっかりと決めておく必要があります。
もし、所有者との合意が得られない場合は建物の明け渡しを要求する訴訟を起こす必要があります。
もし、訴訟で勝訴したとしても、所有者が残置物を処理しない場合は強制執行により処分が可能です。
ただし、訴訟費用がかかるなどのデメリットがあるため、基本的に同意を取り付けて処分する方法を取ってください。
残置物の処分方法
残置物を処分することに同意を得られた場合、実際の処分に取り掛かります。
残置物の主な処分方法としては、以下があります。
- 自治体のごみ収集で処分する
- ごみ処理センターに持ち込む
- リサイクルショップで売る
- 業者に回収してもらう
各方法の詳細は、以下のとおりです。
自治体のごみ収集で処分する
残置物は、家電や大型家具などの特殊なものを除き、不燃ごみや可燃ごみ、粗大ごみなどに分類して、自治体のごみ収集で処分できます。
各自治体のルールに従い、収集日に合わせて指定の収集場所に持ち運んで回収してもらいます。
なお、粗大ごみの場合は粗大ごみ処理券を事前に購入しなければならず、その分の費用がかかるので注意してください。
ごみ処理センターに持ち込む
自治体のごみ収集以外でも、ごみ処理センターに自分で持ち込む形で処分が可能です。
ごみ処理センターは、基本的に平日の日中であればいつでも持ち込み可能で、様々な残置物を処分してもらえます。
ただし、あくまでもごみ処理センターに持ち込むことが前提であり、回収はしてもらえません。
軽トラックなどを準備しなければならない点には、注意が必要です。
リサイクルショップで売る
残置物の中でも、まだ使用できるものであれば廃棄処分ではなく買取してもらうことも可能です。
買取ってもらう場合に真っ先に候補となるのが、リサイクルショップです。
リサイクルショップの場合、買取価格は安いものの比較的程度がよくないものであっても、買い取ってもらえる可能性があります。
また、出張買取に対応したリサイクルショップであれば、お店まで持ち込む必要がなく現場から運んでもらえるので便利です。
ただし、出張買取のサービスエリア外である場合、自分で持ち込んで買い取ってもらう必要があります。
業者に回収してもらう
不用品回収業者など、不要になったものを回収するサービスを利用して処分する方法もあります。
業者によっては、残置物を無料で引き取ってくれるケースもあります。
基本的に、現場で回収してくれるので持ち運ぶ手間も省けて便利です。
ただし、悪徳業者も潜んでいる可能性があり、無料回収と言われていたのに、実際に利用すると法外な費用を請求されたという事例も多くあり、業者選びは慎重に行う必要があります。
残置物の処分にかかる費用相場
残置物撤去費用の相場は、部屋の広さで決定するケースが多いです。
具体的には、立方メートル単位で決定され、概ね以下のような費用がかかります。
部屋数 |
目安の広さ(㎥) |
料金相場 |
1部屋 |
4㎥ |
30,000円~62,000円 |
2部屋 |
8㎥ |
60,000円~125,000円 |
3部屋 |
12㎥ |
90,000円~185,000円 |
4部屋 |
16㎥ |
120,000円~250,000円 |
5部屋 |
20㎥ |
150,000円~310,000円 |
上記に加えて、家電など処分に費用がかかるものについては、別途費用が請求されます。
さらに、マンションの上階などの場合はエレベーターで持ち運ぶ必要があり、作業時間がかかるため割高になる可能性があります。
残置物の処分業者の選び方
残置物の処分業者を選ぶ場合、どのような業者を選んでもよいわけではありません。
中には悪徳業者も存在し、トラブルに巻き込まれる可能性があるので注意が必要です。
残置物の処分業者を選ぶ際には、最低限以下のようなポイントで選んでください。
- 産業廃棄物収集運搬業の認可を得ている
- 実績が豊富である
- 見積りを明確に示してくれる
- アフターサポートがしっかりしている
各ポイントの詳細は、以下のとおりです。
産業廃棄物収集運搬業の認可を得ている
産業廃棄物収集運搬とは、産業廃棄物を収集したり運搬することを指します。
産業廃棄物の収集や運搬をおこなう業種を、産業廃棄物収集運搬業と呼びます。
産業廃棄物の収集や運搬については、都道府県知事が許可した産業廃棄物収集運搬業許可を保有した業者しかおこなうことができません。
残置物は、産業廃棄物なのか一般廃棄物なのかを判断するのは難しいものです。
実際に、環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課長名義で、各都道府県・各政令市廃棄物行政主管部(局)長に向けて、以下のような通知がなされています。
解体物は木くず、がれき類等の産業廃棄物である場合が多い一方、残置物については一般家庭が排出する場合は一般廃棄物となり、事業活動を行う者が排出する場合は当該廃棄物の種類及び性状により一般廃棄物又は産業廃棄物となる。都道府県及び市町村におかれては、一般廃棄物に該当する残置物の処理について関係者から相談があった場合等には、当該市町村における一般廃棄物処理計画に沿った処理方法(適切な排出方法、市町村が自ら処理しない廃棄物については連絡すべき一般廃棄物処理業者等)を示すなど、適正な処理が実施されるよう指導されたい。
もし、産業廃棄物なのか一般廃棄物なのかを悩む場合は、各自治体や業者などに問い合わせることをおすすめします。
そして、産業廃棄物扱いとしなければならない場合は、産業廃棄物収集運搬業の認可を得た業者に依頼してください。
実績が豊富である
残置物の場合、実績が豊富な業者に依頼するのがおすすめです。
残置物の処分実績が豊富であれば、スムーズに処分してもらえるので効率よく処分が完了します。
また、多くの実績があるということは、それだけ業者が多くの人に信頼されている証拠ともなるのです。
よって、過去の作業実績や口コミなども参考にしつつ、最適な業者を選定してください。
見積りを明確に示してくれる
残置物の費用は、基本的に部屋の広さで大まかに決定されると解説しました。
ただし、実際に作業をしてみると予期せぬ形で費用が追加される場合があるのです。
よって、見積もりの段階でどれだけ細かく費用を計上しているかがポイントとなります。
例えば、よくある表現として「一式」というものがありますが、一式に何が含まれているのかを確認できないと、実は必要なものが含まれていなかったという可能性もあるのです。
逆に、不必要なものまで見積もりに盛り込まれていて、費用が余計にかかってしまう可能性もあります。
よって、見積もりを明確に示してくれる業者の方が信頼できます。
アフターサポートがしっかりしている
残置物を処分してもらう業者の中には、残置物の処分だけでなく以下のようなサービスを提供している場合があります。
- 残置物の一時保管
- 必要品の移動
- ハウスクリーニング
- 残置物の買取
以上のようなアフターサポートサービスがあると、とても便利です。
中には通貨料金がかかるサービスもあるため、費用対効果をよく考えて必要なものを利用してください。
まとめ
残置物は、通常の残留物と違って、基本的には所有者の許可なく勝手に処分できません。
よって、所有者の許可を得て初めて処分できる形となります。
処分方法はいくつかありますが、最適な方法で処分を進めましょう。
ティプロでは、残置物の処分にも対応していますので、お困りの際にはぜひご相談ください。
現代は、超高齢化時代と言われています。一人住まいの方が増え、もしもの時は残された身の回りの生活用品の整理にご遺族は途方にくれることになります。遺品整理士として、専門的な知識と豊富な経験から、遺品の整理や生前整理などのお手伝いをさせていただきます。