近年一人暮らしを選んで生活していた結果、孤独死として発見されるケースが増えています。
子どもが独立し配偶者が亡くなった後、自分の好きなように生活したいなどの理由でひとり暮らしをする高齢者が増えていることが背景にあります。
以前は身寄りがなく親族と不仲な関係の方が、孤独死で数週間たって発見されていました。
しかし近年単身で生活することを望むのは、決して親族関係が悪いことは理由ではありません。
親族、特に遠方に住んでいる両親が孤独死で発見されるのは、他人事ではないのが現状です。
この記事では親族の孤独死を発見した時の行動、臭い、特集清掃などについて説明していきましょう。
目次
1.孤独死と孤立死の違い
孤独死とは、ひとり暮らしの者が誰にも看取られることなく住んでいた住居内で亡くなった後に発見される死のことをいいます。
近年は「孤立死」という概念もあり、この場合は親族以外にも友人知人がいない孤立した生活で、連絡がつかない中で死後数週間放置されて異臭や害虫が出現して発見されます。
1)孤独死とは
生前から親族や知人友人などと関わりを持っていても、死亡時に1人だった方は孤独死と表します。
2)孤立死とは
社会や親族との関わりが一切なく、死亡したときにも誰からも看取られない状態で数週間から数か月たって発見された状態のことを表します。
孤独死と孤立死との違いは、死亡したときの故人の状態です。
孤独死は社会から孤立してないので、連絡がないと周囲が心配して死亡して発見されるまでの時間が短いです。
孤立死で死亡した状態は発見まで時間がかかり、悪臭や害虫で初めて気づかれるケースがほとんどです。
2.腐敗するまで遺体が放置されてしまう理由
住居など死を連想できない誰も気づかれにくい場所で死亡するため、遺体は異臭や害虫が発生するまで放置されます。
死亡する場所が医療機関なら、死期を予測して看護師など医療従事者が近くにいるので腐敗するまで放置することはありません。
3.死亡した人体に起こる変化
人は死亡した後少しずつ腐敗が始まります。
人体が腐敗するまでのメカニズムを説明していきますね。
①体温低下
物質代謝がなくなり、熱再生も漸次なくなることから、死後2時間程度から体温低下し、5時間後以降は低温となり冷却する。
②死斑が出現する
心臓が止まり血液の流れが止まると、血管内の血液は身体の下の部分に集まります。
身体の上になった部分の皮膚は蒼白になり、下になった部分の皮下の静脈には血液が溜まっていき、その溜まった血液の色が皮膚を通して見えるのが死斑です。
死亡後20〜30分で点状の斑点が出現して、死亡後2〜3時間で点状にできた斑点はひとつになります。死後20時間以上経過すると死斑は固定します。
③死後硬直が起こる
死後2時間くらい経過すると、人間が生きている時に起こらない化学反応が身体の中に起こり、そのため筋肉が硬化し関節が動かなくなります。これを死後硬直とよびます。
死後2時間くらいで顎関節に現れ、次に全身の筋肉におよび、6〜8時間で手足の筋肉にまで認められるようになります。
死後およそ20時間で死後硬直は最も強くなります。
④腐敗がはじまる
遺体の腐敗は胃や腸から始まり、死後1時間内外で消化器内の細菌の増殖が始まります。
さらに死亡すると本来食べ物を消化する消化液が胃腸を溶かし、発生した酵素による自家融解を起こします。
腐敗が進行すると全身は次第に暗赤褐色に変色し、腐敗ガスで遺体は膨らんでいきます。
さらに腐敗が進行すると遺体は乾燥し、体表は黒色に変色し遺体の組織から腐敗汁がでて骨が露出されます。
⑤腐敗ガス
死後数時間後から腸管内に腐敗ガスが発生し始め、死後2日前後には腹腔内、全身の皮下組織、諸臓器に発生します。
ガスが大量発生した状態を「ティシューガス」といいます。
ティシューガスは強い腐敗臭を発し、遺体の静脈を膨らませます。
肛門は膨張したティシューガスの圧に耐え切れず徐々に開き、便が漏れ出てきます。
これも悪臭の原因のひとつです。
4.死臭はどんな臭いなのか?
人は死亡すると生態を維持する機能が停止するため、腐敗が始まり腐敗臭が発生します。
死臭や腐敗臭が発生する原因などを説明していきます。
1)発生する日数
夏場であれば2~3日、冬場でも5~7日程度で発生します。
2)臭いが出る要因はなんなのか
前述のとおり、臭いの原因は腐敗した遺体です。
生命活動が止まった遺体は腐敗が始まり細菌が増殖して分解する過程で悪臭を発します。
3)どこから漏れるのか
住んでいるドアや窓の隙間から悪臭は漏れていきます。
死亡直後は臭いませんが、死後4~5日経過すると、部屋に充満した悪臭や異臭がドアや窓の隙間から漏れ出ます。
4)腐敗が進むと臭いはどうなるのか
死後2~3日であれば「何か臭う」程度の匂いですが、腐敗が進むとドアや窓を閉め切っていても死臭や腐敗臭は漏れてきます。
よく例えられるのがクサヤやチーズ、腐った生ゴミの匂いです。
においがきつくなる腐敗臭は、住んでいた部屋にしみついて臭いが取れなくなります。
5.腐敗した遺体が周囲に及ぼす影響
1)害虫が発生する
主にハエや蛆虫などが大量に発生します。
腐敗した遺体にハエが遺体に卵を産み付け、蛆虫が生まれハエが大量発生します。
遺体の内側にもハエは卵を産み付けるので、遺体はハエと蛆虫に覆われます。
ハエは1回の産卵で100匹以上の卵を産み付け、蛆虫の孵化は短時間なのですぐ大量のハエや蛆虫が発生します。
ハエは飛び回まわるので、近隣の部屋にも入り込みハエや蛆虫に悩まされることになります。
2)近隣にも臭いが移ってしまう
死臭や腐敗臭が故人の住んでいた部屋に移れば、隣の部屋にまで臭いが届いてしみつく可能性があります。
3)最悪の場合、建物を撤去する可能性も
前述の通り死臭や腐敗臭は一つの部屋にとどまらず、両隣や上下の階の部屋にしみついて広がります。
放置された遺体からは体液が溢れ出ており、臭いだけでなく壁や床等に体液が染み込んでしまいます。
さらにハエや蛆虫も繁殖します。
臭いや害虫の駆除ができて状態に修復できても、次の入居者は望めません。
孤独死があった不動産は事故物件とされ入居者がいなくなるため、家主は建物を撤去しなければならない可能性もあります。
6.孤独死の対処方法は業者に頼む
孤独死の後の処理は、特殊清掃専門業者に頼むのが鉄則です。
腐敗した遺体を素人が片付けて、さらに引っ越しの手続きをするのは負担になりすぎます。
遺体から流れ出た体液が染みついた床や畳の清掃やにおいの除去は、特殊清掃専門業者にしかできません。
1)一般人では対応できない臭い
死臭や腐敗臭は換気などで簡単に消える臭いではありません。
後片付けをする親族の体調を崩すくらいの強烈なにおいです。
特殊清掃専門業者は特別な消臭剤を使って清掃するので、無理はせずに専門業者にお願いしましょう。
2)健康・精神両面でリスクがある
親族の変わり果てた姿を見るだけで精神的にショックを受けるでしょう。
さらに死臭や腐敗臭が漂いハエや蛆虫が大量発生している場所にいるだけで、体調不良になります。
腐敗した不衛生な環境ですから、細菌などに感染する可能性もあります。
心身ともにダメージを受けている状態で、個人的に孤独死した物件の後片付けをするのは不可能です。
7.まとめ
決して身寄りのない方だけが孤独死という最期を迎えるわけではありません。
もし自分の親族が孤独死をしたと連絡があったら自分だけで対応せず、親族の住んでいた物件の清掃は、特殊清掃業者に依頼しましょう。
故人が賃貸住宅や分譲マンションに住んでいた場合は、家主さんや管理人と部屋の原状回復などについて話し合わなければなりません。
親族が孤独死したと連絡があると、動揺して何をしていいかわからない方が多いと思います。
この記事が孤独死をした後の対応に役立てば幸いです。