こんにちは遺品整理士の三島です。

遺品整理をお手伝いさせて頂くなかで「これは法律的にどうなの?」というご質問をよく頂くので、我々遺品整理士は法律の面からも遺品に関する知識は豊富にあります。

中でも、この数年で相談が増えているのが、パソコンやネット上のデータなどのデジタル遺品に関する相談です。

今回はこのデジタル遺品の関する法律的な権利と問題点についてまとめていきます。

故人のデジタル機器は相続人の物になる


スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器は法律上は動産とされ、動産は相続財産として相続人が所有権を取得することになります。

相続人が複数いる場合には全相続人の共有となり、遺言がない場合は遺産分割協議で相続人の中で誰が所有権を取得するかを協議することになります。

共有の状態でも各相続人はデジタル機器の使用は可能ですが、改造などの管理行為には相続人の過半数の同意が必要となります。売却をする場合は全相続人の了承を得る必要があります。

故人のデジタル機器のパスワードロックは解除してもよい

相続したスマートフォンやパソコンなどのデジタル機器は自分の財産と同様に扱うことができます。

スマートフォンやパソコンが複数の相続人の共有の状態にある場合も、ロックの解除は変更を加える性質のものではないため改造などの管理行為にはなりません。

しかし、無用なトラブルを防ぐために他の相続人にロック解除の了解をとっておくと安心です。

デジタル機器などデバイスのロックを第三者が解除する行為はプライバシー侵害などの違法性はないとされ、電気通信回線(インターネット)を利用しないため不正アクセス禁止法の違法になることもありません。

故人の個人的データを見ても法的な問題はない

所有権は物について認められ、形のないデータは所有権の対象にはなりません。

しかし、故人が撮影した写真や日記など著作性が認められるものは著作権が発生し、著作権は相続の対象となるため相続人が引き継ぐことができます。

相続した人は故人のスマートフォンやパソコンなどデジタル機器内にある写真や日記などは自分のものと同様に扱うことができるため、問題なく見ることができます。

個人的な情報にあるプライバシー権は生前の場合のため、家族が故人のデータを見ることは法的には問題はありません。

故人のSNSのアカウントを引き継ぐことはできない


SNSは各サービスの利用規約が優先され、一般的にSNSのアカウントは相続財産には含まれません。

ユーザーが死亡した場合には利用契約は終了するとの規定があれば故人のアカウントを引き継ぐことはできません。第三者への譲渡を禁止するとの規定がある場合も相続財産に含まれる可能性は低くなります。

Facebookには相続人が故人のアカウントを追悼アカウントに切り替えて訃報を伝え、その後アカウントを削除することができるサービスもあります。

Yahoo!のYahoo!エンディングではユーザーの死後にオンラインストレージ内のデータを削除し、課金を停止するサービスもあります。

デジタルデータの遺言は無効

一般的な遺言書は自筆証書遺言書(自分で作成)、公正証書遺言(公証人が作成)、秘密証書遺言(本人が作成し内容を秘密にする)となります。

自筆証書遺言は遺言を残す本人が全文・日付・指名を自書する必要があり、デジタルデータに残した遺言は手書きでないため正式な遺言書として認められません。

自書の遺言書をスキャンしてデータ化したものも無効になります。

生前に個人的なデータを見ることはプライバシーの侵害に当たる

一般的に他人に見られたくない個人的なデータにはプライバシー権が発生します。

スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器内に保存されている個人的なデータを第三者が無断で見た場合、損害賠償請求の対象になることもあります。

しかし、個人的な情報にあるプライバシー権は生前の場合のため、家族が故人のデータを見ることは法的には問題はありません。

不正なログインは違法

SNSやクラウドサービスでアカウントのIDやパスワードを不正に取得してログインした場合は、不正アクセス禁止法で違法になることもあります。

生前に本人の許可を得ているなど、本人がログインしたとみることもでき、処罰の対象にならない場合もあります。

日本ではアカウントの相続は認められない

日本の法律はインターネットがなかった時代に作られたものが多く、デジタルデータの取り扱いに関する法律の整備はまだ変革期にあります。

スマートフォンやパソコンなどの形のあるデジタル機器は相続の対象となりますが、デジタルコンテンツやネットサービスを利用する権利は相続財産として認められないことが多く、故人のアカウントを引き継ぐことができるかどうかはサービスの契約内容にもよります。

電子書籍のKindleの規約ではコンテンツの提供者は個人的に利用する権利を購読者へ許諾しているため、本を購入する場合とは異なりあくまで書籍を読む権利を持っているに過ぎないとされ、この権利の譲渡は不可とされています。

SNSのアカウントは相続することができない

現在、故人がSNSの運営会社に対してアカウントを相続する権利を認める法律はありません。

アカウントの引継ぎなどサービスが定めた規約が原則として最優先となり、遺族が引き取りたいと主張しても認められる可能性は極めて低くなります。

しかし、故人が運営していたブログのアフィリエイトなどが家族の主な収入源になっている場合、、サービスのアカウントを家族に引継ぎを希望する場合は生前にアカウントのIDとパスワードを家族に伝えておく必要があります。

法律的に行っておいたほうがいいデジタル終活

金融や支払いに関する情報は家族がわかるようにまとめておきましょう。

権利としては、ネットバンキングの預金債権やアフィリエイトの報酬請求権、FX取引の利益などは相続の対象となります。

しかし、他の人がその存在を知らない場合は眠ったままになってしまったり、家族がネットからの収入を知らないことで申告漏れとなり延滞税を支払うことになることもあります。

義務としては、故人が契約していた会員制のサービスを知らずにそのまま放置してしまい、後に数ヶ月分の未払い金や延滞料を請求されることもあります。

インターネット経由で利用しているサービスがある場合は、全てのサービスの内容、IDとパスワードなどを書き残しておきましょう。

相続に関して法律的に知っておいた方がいいこと

遺族間で問題となるのは故人にどのような財産があるのかということであるため、相続の対象と相続人の範囲を把握しておく必要があります。

相続の対象となるのは故人が所有していた財産または債務の全て、目に見える不動産や動産、目に見えないネットサービスのうち預金債権や報酬権などもあります。

法定相続人となるのは戸籍上の配偶者と子で、親と兄妹も相続人になることもありますが、事実婚のパートナーは相続人とは認められません。

現在の日本の法律ではデジタルコンテンツの相続についての規定はなく、購入した映画や音楽のコンテンツや電子書籍は、DVDやCD、本と同様には相続することはできません。確実に家族に残したい物は、生前にアナログで残しておきましょう。

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広島で遺品整理業をはじめて12年になります。遺品整理を通じで超高齢化社会の問題に日々直面していくなか、お客様のいろんな心配ごとを解決させて頂いています。同じようなトラブルに直面している方々の少しでもお役に立てればと考えこのサイトを立上げました。
取得資格
「遺品整理士」「特定遺品整理士」「不用品回収健全化指導員」「特定国際種事業者」「産業廃棄物処理業者」 「宅地建物取引業」