こんにちは遺品整理士の三島です。
「人生100年」と言われる現在、「家族に迷惑をかけたくない」からと自ら老人ホームに入居を希望する方や、介護が必要となり、入居せざるを得なくなった方々が増えています。
このようなニーズに応え、民間企業が開業しやすい法改正も後を押したことで、たくさんの企業が介護事業へと参入し希望者を受け入れてきました。
しかし、事業に失敗し経営が破綻。結果、老人ホームが閉鎖へと追い込まれる事案が相次いでいるのをご存知でしょうか。
「終の住処」として選んだ場所を、運営側の都合で「強制的に退去」させられる事態となってしまうのです。
住宅型有料老人ホームの経営破綻という問題に対し、「安心できる場所」を必要とする高齢者とその家族が意識すべきこととはどのようなことでしょうか。
閉鎖が相次ぐ理由を知れば、入居前にチェックする事が見えてくるので是非一読ください。
目次
老人ホーム閉鎖の理由に現れる運営の裏側
そもそも、何故老人ホームの閉鎖が相次ぐのでしょうか。
民間企業が参入しやすい住宅型有料老人ホーム
「住宅型有料老人ホーム」は、主に「民間企業」が運営を行っています。「自治体」や「社会福祉法人」が経営する「特別養護老人ホーム」等に比べ、開業への敷居が低い特徴があります。
・介護職員の人員配置に関する基準がない
・特別養護老人ホーム等に比べ、施設内の設備に明確な義務が少ない
・結果、開業資金が抑えられる
などにより、「今後は介護施設運営に需要あり」と読んだ企業が介護事業へと参入してきました。しかし、相次ぐ企業の参入により「サービスの質」「施設の向上」が求められ、競争が激化。
さらに、「介護の知識に乏しい」企業の参入も多かったため、想像以上に人件費などがかさみ予定通りの運営が行えず経営が悪化というケースがあります。
想いだけでは成り立たない老人ホーム経営
ホームによって、サービスに様々な違いが出るのも住宅型有料老人ホームの特徴です。運営側は「介護への想い」を前面にアピールし差別化を狙うものの、経営者としてのスキルが乏しいと経営が傾きやすくなります。
その結果、事業の売却や閉鎖へと追い込まれる老人ホームが増えているのです。
企業が参入しやすいことにより、老人ホームへ入居できる機会が増えるのは、入居希望者にとって良いことです。しかし、サービスの質が悪かったり、急に退去を宣告されたりして困るのは高齢者とそのご家族です。
老人ホーム入居前に知っておきたいこと
特別養護老人ホームの入居には「要介護3以上」という条件があります。対して、入居の介護度条件がホームによって異なり、入居希望者に幅広く対応できるのが住宅型有料老人ホームです。
特別養護老人ホームに入れない介護認定で要介護2以下の方だけでなく、自立生活ができる高齢者も入居できる住宅型有料老人ホームもあります。
上記で住宅型有料老人ホームの問題点について触れましたが、住宅型有料老人ホームが全て問題あるということではなく、入居前にリサーチしておくことで不安を回避できることもあります。
安心して入居するため、どのようなことをリサーチしておくとよいのでしょうか。
ホームページなどから情報を集める
入居者確保のため、ホームページを運営しているところは数多くあります。
- どのような施設なのか
- どのような運営方針なのか
- 開業してどれくらい経過しているのか
- 費用はどれくらい必要なのか・明確に提示しているか
- トラブルの際、どう対応しているのか
- 運営母体はどこの企業なのか
- スタッフの対応はどうか
- 入居することで安心が得られるのか
などを意識してリサーチすることが必要です。終の住処となるかもしれない大切な場所ですので、施設内の雰囲気、整備されている環境を確認するのが理想です。
経営者が介護に携わった経験者なら、介護の知識についての問題はクリアできるでしょう。さらに介護に関する資格保持者であれば安心です。
開業して間もない頃は入居もしやすい可能性もありますが、実績面では不安材料にもなりかねません。
入居に関わる費用など詳しく明記してあれば、他と比較できるので安心できます。
仮にトラブルが発生した場合、丁寧に対応してくれるのか、様々なトラブルに対応するマニュアルが準備できているのかで信頼度が違ってきます。
運営母体が介護とは全く異なった企業の場合、経営の難しさを理由に事業売却の可能性もあり得ます。しかし、全ての企業が同じではありません。
身の回りの世話をしてくれるスタッフとの信頼関係があっての介護生活です。さらにスタッフが頻繁に入れ替わるような所は注意が必要です。
やはり、入居することで安心が得られる施設を選びたいところです。
評判や口コミも大切
実際に入居されている方、またはご家族や過去に入居していた方などの情報が手に入るのなら信頼度、安心感も増します。担当のケアマネージャーに相談してみるのもお勧めです。プロの視点から意見が得られるでしょう。
体験もしてみる
体験が可能な施設なら、契約前にぜひ体験しましょう。実際、試してみないと見えてこない部分もあります。
他の施設と比較する
選択肢が複数用意できるのであれば、良い比較材料となります。
不満や不安が少しでもある場合、ご家族やケアマネージャー、担当者と納得できるまで相談してみましょう。悩みが払拭されれば、安心して入居できるますね。
しかし、信頼できる老人ホームに入居できたからと言って安心かというと、実はまだ注意が必要です。
もしもの際に備えて、行っておきたい準備
もし、自分自身、または老人ホームで生活している親に万が一のことがあった場合、その後のことについて考えていますか?
退去の期限
入居者の方が亡くなった場合、多くは退去となります。退去期限は場所や地域によって様々ですが、大切な家族を失ったショックの中、通夜、葬儀、そして仕事など普段の日常生活を送りつつ、退去のための荷物搬出や手続きを済まさなくてはならないのです。
決して十分な時間があると思わないほうが良いでしょう。
相続の問題
銀行の預金通帳や株式証券、生命保険等の書類が出てきた際などはトラブルになりがちです。金銭的なモノはなくても、土地の登記資料なども同じでトラブルの元となります。円満に話を進めるべく、相談しておくべきことの1つです。
相続税の申告期限は、死後から10ヶ月となります。
形見分け・遺品の整理
退去のために搬出する荷物の中には、どう処分して良いのか分からないモノ、形見分けとして残しておきたいモノなど様々出てくるものです。生前の間に相談し、整理しておくことを事前にトラブルや問題を回避することもできます。
終の住処問題どう考えますか?
生まれ育ち、慣れ親しんだ我が家が1番安心なのは皆さん同じです。それが高齢や家庭の事情などで迷惑をかけてしまう。「家族に迷惑をかけたくない」「施設の方が気が楽だ」と新たな終の住処を老人ホームに求める声に応え、介護事業は大きくなりました。
しかし、その中には経営悪化により閉鎖となり、強制退去を余儀なくされる高齢者がいます。
そのような事態にならないため、入居の際には入念にリサーチ、相談を重ね、納得できる場所を選ぶ必要があるのです。
そもそも、民間企業に参入を促すために敷居を下げた法改正を行ったことにも問題はなかったのでしょうか。もちろん、閉鎖に追いこまれる結果となる介護事業経営を甘く見すぎた企業に責任がないとは言い切れません。しかし、入り口を緩くし過ぎたことで、起きた結果でもあると言えるのではないでしょうか。
ますます高齢化が進む日本。この問題が他人事ではなく、ご自身の家族問題となる日もそう遠くないかもしれないのです。
皆さんは、終の住処を追われる問題について、どのようにお考えですか?