遺言

民法上の法制度における遺言は死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をされ、法律上の効力を生じさせるためには、民法に定める方式に従わなければならないとされています。

●遺言制度の趣旨

・遺言自由の原則
遺言の制度を認めることで、人は遺言により生前だけでなくその死後にも自己の財産を自由に処分できることになります。

●法的性質

・要式行為
遺言は民法に定める方式に従わなければすることができない要式行為(一定の方式によることを必要とする行為)であり、方式に違反する遺言は無効となります。

・単独行為
遺言は相手方のない単独行為です。

・死因行為(死後行為)
遺言は遺言者の死亡後に効力が生じる法律行為です。

・代理に親しまない行為

●遺言能力

満15歳以上の者は遺言をすることができます。

遺言は本人の最終意思を確認するものでありまた代理に親しまない行為であるため、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人が遺言をする場合であってもその保護者は同意権や取消権を行使することができません。

ただし成年被後見人については、医師2人以上の立ち会いの下で正常な判断力回復が確認された場合にのみ遺言をすることができます。

●遺言指定事項

遺言で最も重要なことは、遺産の処分について被相続人の意思を反映させることにあります。

被相続人の意思である遺言を尊重するため相続規定には任意規定が多く、遺言がない場合は民法の規定に従って相続が行わます。(法定相続)

遺言を作成しておくと遺産の全体または個々の遺産を誰が受け継ぐかについて自らの意思を反映させることができ、遺贈の方法により相続人以外の者に遺産を与えることも可能となります。

遺言がない場合は相続手続には相続人全員で共同して遺産分割協議書を作成し、登記所や金融機関などに提出する必要があります。
相続人の間で合意が得られない場合や相続人が行方不明の場合、遠方に居住している場合などには、遺産分割協議書の作成は困難です。
相続税の申告期限(10か月以内)に分割が確定しない場合は、各種の軽減特例を受けらなくなりますので注意が必要です。

遺言でどの財産を誰に相続させるかを明確に記載することにより当該相続人は不動産の所有権移転登記を単独で行うことができ、遺言で遺言執行者を指定することにより預貯金の払戻しを円滑に行うことができます。

遺言には相続に関するさまざまな手続に関する遺族の負担を軽減するという実務上のメリットがあります。

遺産の処分に関連しない行為(未成年後見人の指定など)も遺言によって行うことができ、生前に行うことも可能で遺言によっても行うことができる行為があります。(子の認知など)

また、一般財団法人の設立や信託の設定もでき、生命保険の保険金受取人の変更も可能とされています。

遺言の撤回は遺言の方式のみによって可能です。

●遺言の方式

①普通方式遺言

・自筆証書遺言
条件遺言書の全文が遺言者の自筆で記述(代筆やワープロ打ちは不可)、日付と氏名の自署、押印してあること(実印である必要はない)となります。
遺言書の保管者は相続の開始を知った後、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出してその検認を請求しなければなりません。

・公正証書遺言
遺言内容を公証人に口授し、公証人が証書を作成する方式です。証人2名と手数料の用意が必要で、推定相続人・受遺者等は証人にはなれません。
公証人との事前の打ち合わせを経るため、内容の整った遺言を作成することができます。
証書の原本は公証役場に保管され、遺言者には正本・謄本が交付されます。
遺言書の検認は不要で、公証役場を訪問して作成するほか公証人に出向いてもらうことも可能です。

・秘密証書遺言
遺言内容を秘密にしつつ公証人の関与を経る方式で、必要事項はも公正証書遺言と同様です。
代筆やワープロ打ちも可能ですが遺言者の署名と押印は必要であり、その押印と同じ印章で証書を封印します。
代筆の場合は証人欠格者以外が代筆する必要があり、遺言者の氏名と住所を申述したのち公証人が証書提出日及び遺言者の申述内容を封紙に記載し、遺言者及び証人と共に署名押印し、遺言書の入った封筒は遺言者に返却されます。
偽造や変造のおそれがないというメリットはありますが、紛失したり発見されないおそれがあります。
遺言書の保管者は相続の開始を知った後、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出してその検認を請求しなければいけません。

②特別方式遺言
普通方式遺言が不可能な場合の遺言方式です。
普通方式遺言が可能になってから6か月間生存した場合は、遺言は無効となります。

◆危急時遺言

・一般危急時遺言
疾病や負傷で死亡の危急が迫った人の遺言形式です。
証人3人以上の立会いが必要で証人のうちの1人に遺言者が遺言内容を口授しますが、遺言不適格者が主導するのは禁止です。
口授を受けた者が筆記をして遺言者及び他の証人に読み聞かせまたは閲覧させ、各証人は筆記が正確なことを承認した後に署名・押印します。
20日以内に家庭裁判所で確認手続を経ない場合、遺言が無効となります。

・難船危急時遺言
船舶や航空機に乗っていて死亡の危急が迫った人の遺言方式です。
証人2人以上の立会いが必要で証人の1人に遺言者が遺言内容を口授し、口授を受けた者が筆記をして他の証人が確認して各証人が署名・押印します。
遅滞なく家庭裁判所で確認手続を経る必要があります。

◆隔絶地遺言

・一般隔絶地遺言
伝染病による行政処分によって交通を断たれた場所にいる人の遺言方式で、刑務所の服役囚や災害現場の被災者もこの方式で遺言をすることが可能です。
警察官1人と証人1人の立会いが必要、家庭裁判所の確認は不要です。

・船舶隔絶地遺言
船舶に乗っていて陸地から離れた人の遺言方式で、飛行機の乗客はこの方式を選択することはできません。
船長又は事務員1人と証人2人以上の立会いが必要、家庭裁判所の確認は不要です。

●証人・立会人の欠格者

証人・立会人は以下の欠格者以外の者なら誰でもなることができます。
・未成年者
・推定相続人、受遺者及びそれらの配偶者、並びに直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

●共同遺言の禁止

遺言は2人以上の者が同一の証書ですることができません。
2人以上の者が同一の証書で遺言をすると各人が自由に撤回することが難しくなり、故人の最終的な意思の確認が困難になるためとされています。
夫婦が同一の証書に連名で遺言する場合などが共同遺言として無効となります。

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