家族信託

家族信託とは、遺産を持つ方が自分の老後や介護等に必要な資金の管理・給付を行う際、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理や処分を任せる家族のための財産管理です。

●家族信託のメリット

①家族信託で本人の体調・判断能力に左右されない財産の管理処分が実現することができる

【認知症による資産凍結対策】

本人の元気なうちから財産管理を託せるとともに、託した後に本人の判断能力が低下や喪失しても、本人の意思確認手続きが本人に対して行われないため、実質的に資産凍結されることなく、受託者(財産管理者)主導で、財産の管理や処分がスムーズに実行することができます。

家族信託を事前に組むことで、老親が入院や入所したために空き家となった実家を適切な時期に適正な価格で受託者が売却でます。

②家族信託で成年後見制度の代用としての柔軟な財産管理が実行することができる

【成年後見制度の代用による自由かつ軽負担な財産管理】

家族信託による財産管理は、本人が元気なうちに本人の希望や方針、そのために付与する権限をきちんと信託契約書の中に残しておけるため、その希望や方針に反しない限り受託者(財産管理者)は、本人の希望に即した柔軟な財産管理や積極的な資産の有効活用を実行することができます。

成年後見制度の利用下では実行できない資産の組換え(遊休不動産の開発、老朽化した賃貸物件の建替え、不動産の買換え、借入れによるアパートの建設など)による相続対策(相続税対策)の実行も、本人の健康状態に左右されずに相続発生の直前まで継続することができます。

成年後見制度は、様々な負担や制約があります。

・家庭裁判所(後見監督人が選任されている場合は後見監督人)への定期的な報告義務の負担が重い
・後見監督人が選任された場合の後見監督人報酬の負担(月額1~2万円程度)がある
・成年後見人が行動できるのは、家族ではなく本人にとってメリットがあることに限られる

③家族信託で遺言の機能・受遺者の財産管理が実現することができる

【遺言代用・受遺者の財産管理】

本人の死亡により遺産をもらった者が既に財産管理の能力が無い場合には、もらった受遺者に成年後見人を就けて財産管理を行ってもらう必要もあります。

しかし、家族信託はもともと遺言の機能として本人死亡後の財産の承継者を家族信託の契約書の中で指定できる上に、本人が亡くなった後も引き続き受託者の下で財産の管理が可能となります。

④家族信託で自分の思い通りの資産承継の道筋が実現することができる

【争族・遺留分・資産承継対策】

家族信託には遺言の機能がありますが、2次相続以降の資産の承継先まで自分で指定することができます。自分の希望する順番で何段階にも資産承継者(受益者)の指定が可能となります。

1次相続による資産承継者が認知症や障害により遺言などで次の承継者を指定できない場合に、その人に代わって資産承継者を指定できるため、後々の遺産分割協議による争いの余地を排除できます。

⑤家族信託で不動産の共有回避や共有不動産の塩漬け予防が実現することができる

【不動産の共有回避策・共有不動産のトラブル回避策】

不動産を将来的に兄弟や親戚などで共有せざるを得ない場合、あるいは既に共有になってしまっている場合に、何らかの事情により共有者全員の同意が得られなくなり、ベストなタイミングで不動産が有効活用や処分できなくなるリスクを回避することができます。

●家族信託のデメリット

①損益通算ができなくなる

収益物件を信託財産に入れた場合、この信託不動産の年間収支上の赤字はなかったものとみなされます。

損失は、信託財産以外からの所得と損益通算して課税対象の所得を減らすことができません。その損失の翌年への繰越しもできないため、税務的に不利益が生じないかどうかは十分な検討や検証が必要です。

信託契約を複数に分けた場合もそれぞれの信託契約をまたいだ損益通算もできないため、家族信託の設は精通した専門家や税理士などに相談するといいでしょう。

②信託の限界

遺留分減殺対象財産の順序指定など、信託では対応できず、遺言でなければできないことがあります。

相続発生時の遺産全てを生前の信託契約で網羅しておくことはできないため、信託財産で管理できない財産について遺産分割協議を排除するには、信託契約とは別に遺言書を作成し、主たる遺産以外のすべての遺産の承継先を指定しておくことが必要です。

成年後見制度との比較における身上監護の問題もあります。

信託の受託者は身上監護権がないため、受託者の身分で本人の入院手続きや施設入所手続きをすることはできません。
身上監護権が必要であれば、成年後見制度を利用して後見人として身上監護権を行使する必要があります。
通常は子や家族の立場というだけで入院や入所手続きをすることができるため、実質的には子や家族である受託者が身上監護面でも対応できるケースは多くなっています。

③税務申告の手間が増える

資産の一部又は全部を信託財産に入れた場合、そこから年間3万円以上の収入がある場合は信託計算書や信託計算書合計表を税務署に提出する必要があります。

毎年の確定申告の際、信託財産から不動産所得がある方は不動産所得用の明細書の他に信託財産に関する明細書を別に作成して添付する必要があります。

④実務に精通した専門家が少ない

家族信託は最先端の仕組みであるため、弁護士・司法書士・税理士等の法律専門職、公証役場の公証人であれば誰にでも相談できるということではありません。

最先端の財産管理や資産承継の仕組みである家族信託についてきちんとした見識と実務経験がある方にご相談することが必要です。

⑤家族信託は目的ではなく手段

家族信託=節税策ということではありません。

節税対策として家族信託を検討する方は、そのための節税計画を持っていなければ家族信託を組むだけでは何ら節税効果を見込むことはできません。

家族信託を組むだけでは直接的な税務メリットが生じないこと、具体的には相続発生時における財産評価の減額効果が無いことなどは十分に理解しましょう。

老親や家族にとって何を実現したいのかという目的を明確にしなければ、そのための家族信託の設計はできません。

相続税対策なのか、成年後見制度に代わる負担の少ない柔軟な財産管理の実現なのか、将来の遺産争いを予防する目的なのか…。

家族信託は、認知症による資産凍結対策、資産凍結回避の先にある相続税対策や空き家対策、あるいは事業承継対策、共有不動産の塩漬け回避策、親なき後問題への備えなど様々なニーズに応えうる手段です。

まずは本人及び家族の想いを皆で共有した上で、その目的を実現する選択肢の一つとして家族信託を検討する必要があります。

⑥専門家への報酬を必要経費と割り切る

家族信託は最先端の仕組みであり、誰でも相談にのれる訳ではないため、相談料や受任に伴うコンサルティング報酬は、通常の遺言書作成や成年後見などの業務に関する報酬よりも高めになっています。

家族信託に関する報酬が他の業務に比べて高額なのは、多方面の法的知識を要することや家族会議に何度も同席することを想定しているためでもあり、契約を締結したら終わりではなく今後信託契約が継続する限りずっとサポートする前提で関わるためでもあります。

両親の老後の財産管理やこれから先何十年にもわたる財産管理や資産承継の道筋をきちんと作れることを考えれば、信託の実行時にある程度まとまった費用がかかってもそれ以後のコストはほとんどかからないため、長期的な視点に立てば決して高額な支出ではありません。

⑦長期に亘り当事者を拘束

信託の持つ機能としての資産承継の指定(遺言代用)、後継ぎ遺贈型受益者連続信託として1次相続だけでなく、2次以降の財産承継者まで自分一人で決定できるという画期的な機能があります。

何世代にもまたがり、長期に亘って資産の処分に制限をかけるようなことにもあり、争族や不測の事態を誘発しかねないリスクもあります。

20年~30年先を見据えた家族信託の設計には、通常以上の熟慮と親族関係者への想いの伝達、共有や納得が必要です。

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